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【またも長編日記】アンティーク三昧

2003年4月3日 (木)
 
ここのところ物欲女である私のせいで、夫はやたらとショッピングモールやアンティークショップに付き合わされている。「ごめんね、私の好きなところばかり。他に行きたいところない?」と訊くと、「いや、ない。仕事で行ったから」と夫は答えた。

…そうだ! 夫は私なんかよりもたくさんの場所へ出かけている。ロサンゼルス一帯のあらゆる見所、そうでない所、あるいは一般人の入れない特別な場所でさえ訪れ、すっかり南カリフォルニアを満喫しちゃっている。アムトラックに乗っての小旅行もしたし、高級レストランでの食事だって何度もしている。○○氏と写真に写ったり、××選手と握手したり…羨ましい限りだ。

そこで私も最後の追い込みのように、精一杯遊ぶことにした。

日々通っているレドンドビーチのドッグパークに行く途中、アンティークショップがやたらと立ち並ぶ通りがある。車で通ると一箇所に密集しているように思えるが、実は一軒一軒は少しずつ離れており、歩いて移動するにも車で移動するにも中途半端な距離だ。

「神保町みたいに、いくつも店が密集していて、歩いてぶらぶらできるところがあればいいのに」と私は呟いた。

本日出かけた場所は、まさにそんな街。オレンジ・カウンティの中心部にあるオールドタウン・オレンジという一角で、「南カリフォルニアのアンティークの首都」と謳っている。情報紙によると、700のディーラー、64のアンティークショップ、18のアンティークモール、12のアートギャラリーが集まっているとのこと。とはいえ、実はそんなことは全く知らなかった。情報紙の広告でキッチン用品が充実しているという店を見つけ、そこ目当てに行っただけだった。

街はとても美しく、今日に限ってカメラを持っていない私はものすごく後悔した。街全体がアンティークを意識した造りになっている。例えば床屋なんて、映画に出てくるような昔風の雰囲気。それから、ファーストフード店が一軒もないのには驚かされた。赤と黄色が強調されたようなロゴの店はどこにもなく、落ちついた色の看板を持つカフェが何軒もある。ソーダファウンテンが併設された、昔ながらのアメリカンなドラッグストアを見ることもできた。

「ゆっくり回っていたら日が暮れるよ」と夫に言われ、いつものごとくサクサクッと行動を開始した。

まずはお目当ての店、Chapman Antique Mall。これまでに見たこともないようなパイレックスがいくつも置いてある。それも状態がすごく良い、美しいものばかり。のちに本を読んで知ることだけど、とてもレアで入手困難だといわれるピンク色のボウルのセットも発見した。百数十ドルである。目の保養になった。

あとの店の名前はほとんど覚えていない。もう、サクサクサクサク回っているのである。夫は私よりも3倍くらい早く店内を見て回る。そして「ここにある」「あっちにはもっとすごいのがある」と、ナビゲーターをやってくれる。

ちなみに、夫は私よりも財布の紐がゆるい。「はるばる来たんだから、何も買わないで帰るのは勿体ない」と、やたら何かを買うように勧める。嬉しいのだけど、私は貧乏が怖くてなかなか買うことができない。だが今日は冷蔵庫を売ったお金が入ってきたため、いつもよりも多めの現金を財布に忍ばせて来ていたのだった。

何軒も回り2時間が過ぎたが、まだ何も買っていなかった。無料で配布している情報誌紙ばかりが手に増えて行く。

Orange Circle Antique Mallに入ると、1950年代のうちわが売られていた。「盆踊り」と書いてあるのが笑えた。

その店ではガラスケースにアンティーク関連の本が並べられていた。覗き込んでいるとすぐに店員のおじいさんが声をかけてきた。「パイレックスに関する本ってありますか?」と尋ねると、すぐに数冊を出してくれる。うち1冊が、私がamazon.comでwish listにも入れているものだった。29ドル…高い! でも、amazon.comで買うと更に1ドル99セントの特別料金がかかる…。

悩んだ挙げ句、購入を決定した。パイレックス自体よりも高い値段だけど、本好きの私にはパイレックス+本というダブルの価値があるのだ。それに、私は店員のおじいさんにものすごく好感を持ってしまった。書籍類の在庫は数百冊はあるだろうというのに、彼は選んだ1冊1冊の内容を把握しており、簡単に説明してくれる。そのプロフェッショナルぶりに「Thank you」以上の敬意を払いたかった。

更に店内を回り、かわいらしいパイレックスのコーヒーカップを見つけた。1つ2ドル50セント。その場にあった2つを買うことにした。

本とカップを手に入れ、私は大満足。というのに夫は「最初の店にあったあの赤い四角い奴、いらないのー?」と訊いてくる。本当は自分が欲しいんじゃないの~?と、私は少し疑った。

ここ数週間で一体何軒のアンティークショップを回ったのだろう? たった数週間で2年分は回ったなと実感した。買った品の数も2年分か…(笑)。

アメリカに滞在していた2年弱のうちの98%の時期は貧乏で貧乏で、99セントのおやつも買えず、家賃、光熱費、ローン、食費、ペット費にしかお金を使わなかった。医療保険にも入らず、食費は毎月100~150ドル。無料のドッグパークでほとんどの週末を過ごしていた。あるいは渡米前、結婚してからはずっとアメリカ生活のためと、本業で働きまくり、内職もし、貯金しまくり、節約しまくっていた。だから、こんなに好きな物を買ったのは5年ぶり。独身時代以来だ!

ま、それでも、合計1万円くらいなんだけどね(笑)。2年弱で1万円のお小遣い、安いほうだ!

自分のことを物欲のない人間だと最近は思っていたのに、やっぱりそれは間違いだった。元来、蒐集癖はあるのだ。レッド・ツェッペリンの海賊盤CDを漁りに西新宿をうろつき、吉行淳之介の稀覯本を求めて神保町はもちろん関東中の古書店を巡る私が、パイレックスにはまっても無理はない。

kapacyanさんとOmamamaさん、素敵な世界を教えていただき、ありがとう! 感謝しています。