店を出て少しの所にあるバス停から、またロンドンの中心に戻る。おのぼりさんと、ばかにされそうなのだが、帰る前に行きたかったのがHarrodsの食品売り場なのだ。私達の住む街ではおよそお目にかかれない(といっても日本では珍しくもない)凝ったつくりのケーキやチョコレートを眺めて歩く。旦那が急いで私へのバースデーカードを買いたい(28日が私の誕生日であった)というので、一人ぶらぶら歩いていると、その階の隅に高級そうなカフェがあるのを発見。ここでもパティセリータイプのケーキが買え、店内で食事もできるらしい。高いけれど、せっかくロンドンに来たのだからと、無事買い物を終えた旦那とそこでお茶をする事に。
一見入りづらそうな雰囲気ではあるが、実際に入り口に立つと店員の応対も丁寧なので、あまり気後れせずにすむ。周りの客層は、女性が多いが、特にハイソな方ばかりという訳でもなく、私達のような観光客らしき人たちもちらほらという感じである。
メニューにあるモンブランにも心を動かされたが、結局私は、日本語に訳すと「栗の粒入りマロンアイスパフェ」というのを頼み、夫はチョコレートケーキと紅茶を頼んだ。
私のパフェは上にこれでもかと生クリームが乗っかっていて、生クリームが少ししか食べられない私は中心部分にたどり着くのに四苦八苦。トンネルを掘るかのように、上はその状態のままアイスだけを口に運ぶ。
味はと言えば、とにかく甘い。アイスだけならまあ甘め、ぐらいなのだろうが、この中にマロングラッセがいくつもぼろぼろ入っているのだ。私は栗のデザートが好物ではあるし、甘露煮や渋皮煮も大好きなのだが、唯一苦手とするのがこの甘すぎるマロングラッセだ。そのままでも甘いのに、アイスとの相乗効果で、まるで栗味の砂糖を食べているかのようだ。
ついに私は半分でギブアップ。旦那のチョコレートケーキも味見させてもらったが、かなーり濃厚で、一口食べただけで鼻血が出そうである。でも彼はさすがにチョコレート好きのイギリス人だけあって、残さずに食べていた。
私達が食べ終わって、そろそろ行こうかとしていた所、ちょうど旦那の真後ろに座っていた50代ぐらいの女性が何と氷を喉につまらせてしまった。周りが騒然と見守る中、息子とおぼしき男性が近くにいた女性に指示されるまま、何とか助けようとするがうまくいかず、彼女は息ができないまま。店員達にもファーストエイドの知識がないらしく、救急車を呼べ!という指示が叫ばれるだけである(それではこの場合遅すぎるのだが)。見かねた旦那が彼女の息子と代わり、後ろから抱えあげて胸を圧迫させることによって呼吸器官を開かせるというポジションを何度か試したところ、幸いにも彼女は呼吸を取り戻すことができ、盛大に咳をし始めた。周りが何事もなかったかのようにおしゃべりに戻る中、私が旦那に労をねぎらうと、旦那が私にこうつぶやいた。
「あの女性、僕に触られるぐらいなら死んだほうがましだった、みたいな態度だったよ」。
私はあまりわからなかったのだが、旦那の話によると、少し落ち着いてからも、もしものために様子を伺っていた旦那に彼女は一切お礼も言わず、かわりに彼女の息子がお礼を言っていたそうだ。
その女性は顔だけ出す形の、頭からの黒いベールをかぶっていたが息子の方はジーンズとちょっと派手なジャケットを着ていた。
私達に考えられるのは、もしかしたらその女性は宗教上の理由で、自分の夫以外の男性から触れられるのはタブーという意識が刻み込まれていて、それで嫌悪感を露わにしたのかも、という事だけである。旦那にとっては気分の悪い結末ではあったが、私にとっては宗教心と公共性について考えさせられる一件であった。
一泊二日のロンドン旅行は、この後すっかり時間がおしてしまい、計画していたタイ料理にもありつけないまま、私達が夕方7時の電車で帰途につくことによって幕を終えた。案の定たった二日で体重がどーんと増えてしまい、今それをどうやって減らそうか思案中である。よいダイエット法があったら教えてもらいたい。
明日からまじめにごはん日記でもつけて、食生活を見直すことにしようか・・・。
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