無人決済1000店めざす!TOUCH TO GO阿久津智紀社長が語る「新しいコンビニの姿」とは

取材・文:若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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人件費高騰にあえぐコンビニエンスストア(CVS)業界で、いち早く無人決済システムの精力的な導入に乗り出したファミリーマート(東京都/細見研介社長)。そのパートナーを務めるTOUCH TO GO(東京都、以下:TTG)は、日本における無人決済システム実用化の草分けともいえる存在だ。無人決済システムが小売業にもたらすものは何か、また、これからのCVSの変化やあり方について、阿久津智紀社長に話を聞いた。

利用者の88%が支持する無人決済システム

 TTGは2019年、JR東日本スタートアップと、コンサルティング事業やシステム開発事業を営むサインポスト(いずれも東京都)が50%ずつ出資する合弁会社として設立された。そのトップを務める阿久津智紀社長は、04年JR東日本へ入社。JR東日本グループの“駅ナカ”CVSの店長や、青森県でのシードル工房事業の立ち上げなどを行う。その後、JR東日本グループの保有する経営資源や情報資産を活用したビジネス実現をめざす「JR東日本スタートアッププログラム」で、無人決済システムの特許を持つサインポストと出会った。自身のCVS店長としての経験などから無人決済システムに強く興味を引かれ、実用化のためにTTGを立ち上げたというユニークな経歴の持ち主だ。

21年3月にオープンした「ファミマ!!サピアタワー/S店」
21年3月にオープンした「ファミマ!!サピアタワー/S店」。同じビルの3階にある「ファミマ!!サピアタワー店」のサテライトという位置づけだ
21年3月にオープンした「ファミマ!!サピアタワー/S店」の同店外に掲げられている案内
同店外に掲げられている案内。シンプルな手順で買物が完結することを示している

 TTGは20年3月、実用化第1号店として直営店舗「TOUCH TO GO(以下、直営店舗)」(東京都港区)をオープンしたのを皮切りに、他社とも提携しながら徐々に無人決済市場を開拓していった。システムの名称は「TTG-SENSE」。その大まかな仕組みは次のとおりだ。利用にあたって事前登録やスマートフォンアプリのダウンロードなどの準備は一切不要。お客は入口ゲートを通り、ふだんどおり品物を手にとってレジに向かうだけでよい。品物が何であるかは、店舗天井に設置されたカメラや棚のセンサーで自動認識され、お客がレジに立つと手に取った品物一覧が表示される。商品の支払いが済むと出口ゲートが開いて退店が可能になるという仕組みだ。

 設置されているカメラの台数は、21年3月にオープンしたファミリーマートの無人決済店舗第1号店「ファミマ!!サピアタワー/S(サテライト)店(以下、サピアタワーS店)」(東京都千代田区)の例で、店舗面積約55㎡に対して48台。万が一判定された商品が間違っていればレジで修正することもできるが、商品認識率(お客が手に取った商品が正しく判定される率)は95%ときわめて高い水準を実現している。

21年3月にオープンした「ファミマ!!サピアタワー/S店」で決済をしている様子
レジの前に立つだけで、手にしている商品の一覧が表示される。バーコードスキャンの手間などがなく、有人レジや一般的なセルフレジよりもスピーディーだ

 一度利用し、仕組みを理解すれば有人レジ以上に便利だと感じるお客が多く、直営店舗の利用者を対象に行ったアンケートでは、実に88%もの人が「この買い方(無人決済)でよい」と回答しているという。とくに、決まったものをスピーディに購入するニーズの高いCVSとは相性のよいシステムだ。

TOUCH TO GO 阿久津智紀社長
TOUCH TO GO 阿久津智紀社長

 「当初から、ユーザー側に何かを強いるのではなく、自分の親世代でも無理なく使えるものにしたいと考えていた」と阿久津社長。ユーザビリティの面ではかなり理想に近づいてきたとする一方で、「もう少し進化したい。本当は、普通の店にはないゲートなどもなくし、誰でもが自然に利用できる仕組みにしたい」(阿久津社長)とも語る。

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