ホールディングは有効?比較実験 牛もも編
Description
材料
(実験①~③)
作り方
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「ホールディング」とは「調理した塊肉を、それ以上調理が進まないような温度で“保温”しておくこと」だが、
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例えばレストランなどでオーダーが入れば温かい状態ですぐサーブできるように、ローストビーフなどに使われる手法である。
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ところがこの「ホールディング」には「保温」だけでなく、なんと「肉を柔らかくし、旨みをアップさせる」すなわち「肉の熟成」の
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効果があるとも言われている。「肉の熟成」とは「温度や湿度を完璧にコントロールし、肉を腐敗させずに微生物の働きよって旨みを
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引き出し肉を柔らかくすること」であるがこれには数十日もかかるという。
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そして真偽は不明であるが、「ホールディング1時間」は「肉の熟成2日」にも相当するとの情報もある。
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これがもし本当であれば、12時間のホールディングで24日間の熟成肉と同じような柔らかさと旨みが実現できるということか?
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だがホールディングに関する詳しい情報はとても少なく、自分の知りうる限りの料理書などを調べてもほとんど出てこない。
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これは実際にやってみるしかないと考え、次の方法で比較実験を行う。
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オーストラリア産牛もも(厚さ4cm)を使い、
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実験① BONIQ(57℃ 4時間15分)→バッグに塩を入れて肉に含ませる
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実験② BONIQ(57℃ 12時間)→バッグに塩を入れて肉に含ませる
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実験③ BONIQ(57℃ 24時間)→バッグに塩を入れて肉に含ませる
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①はBONIQで紹介している基本的なローストビーフのやり方であり、設定時間は「加熱時間基準表」
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(https://boniq.jp/pdf/ttguide.pdf)の通り、4cmの厚さの牛肉を57℃で低温調理する
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場合に安全レベルまで加熱殺菌できる時間である。
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ホールディングに効果があるとすれば①よりも②、③と時間が長くなるにつれて肉が柔らかくなり、旨みがアップするはずである。
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この時、塩を入れるタイミングは低温調理後にバッグに塩を入れて肉に含ませることとする。
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(「58℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較(5173129)」参照:「低温調理後、塩をバッグに入れて含ませる」
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が一番歯切れがよく、ジューシーであるという結果になった。)
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<BONIQ設定>
57℃
実験①4時間15分
実験②12時間
実験③24時間
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<比較実験>
すべて同じ大きさ、厚さに整えた牛もも肉を、
実験①BONIQ(57℃ 4時間15分)
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実験②BONIQ(57℃ 12時間)
実験③BONIQ(57℃ 24時間)
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BONIQの終了タイマーが鳴ったらそれぞれバッグを開けて塩を入れ、肉に含ませる(1時間)。
その後比較試食を行う。
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<比較実験結果>
まずドリップの量を比べてみると、
実験①BONIQ 4時間15分:29g
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実験②BONIQ 12時間:32g
実験③BONIQ 24時間:44g
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実験①と②は時間がかなり違うにもかかわらず3gしか違わない。ところが実験③は44gとずいぶんドリップが流出した。
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次に試食すると、
実験①:間違いなくしっとりとジューシーで柔らかい。
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実験②:ドリップの量で見れば①とわずかな差であったが、肉質は明らかにジューシーさは減っている。
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しかし、噛めば噛むほど旨みが出てくる。ホールディング(保温)によって旨みがアップしたのは間違いない。
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実験③:明らかにパサつきが出てきているが、噛めば噛むほど旨みが出てくる。食べた時のパサつく印象がどうしても勝ってしまうが
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味だけで言えば①②よりも旨みに丸みがありしっかりしている。
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塊肉を上から押してみると①が一番柔らかく③が一番弾力があるが、スライスを食べてみると特に③が硬いとは感じなかった。
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まとめると、
柔らかさ:①4時間15分 ≒ ②12時間 ≒ ③24時間
しっとりさ:①>②>③
旨み:③>②>①
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総合的な美味しさ:②>①>③
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ホールディングの時間が長くなるにつれ旨みはアップしたが、ドリップが流出しパサつきが出てくる。
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今回は3つの実験の中で②が総合的に美味しいとしたが、①よりジューシーさが減ってしまったのでベストとは言い切れない。
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「ホールディングは肉を柔らかくし、旨みをアップさせる」という説は、「旨みをアップさせる」は成立するが、パサつきが
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出てしまうので「肉を柔らかくする」は実証できなかった。
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例えばもっと低い温度ならドリップの流出が抑えられるかもしれない。ただ、10℃~50℃付近の温度帯は雑菌が
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繁殖する危険性があるので、要加熱食材の場合、BONIQではあまり低い温度の低温調理はおすすめしていない。
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そこで「55℃」ではホールディングによってドリップの流出を抑え、かつ、旨みをアップさせることができるだろうか?
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さらなる実験で真偽のほどを確かめたい。
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